2019年12月2日月曜日

Hyperledger Fabric

企業向けのブロックチェーンのオープンソースというとLinux FoundationによるHyperledgerである。2016年にIBMが寄贈したコードがHyperledger Fabricとなって以来ずっと拡大を続けており、2019/12/2現在で、Hyperledgerのページを見ると、15のプロジェクトが存在するという驚きの状況である。

ブロックチェーンはガートナーのハイプ・サイクルでは幻滅期に位置づけられ、2021年には市場に浸透していくことを予測している。実際、多くの企業が実証実験を行い幻滅している状況で、一部のサービスについては提供が進んでいる状況にあることを考えると、これは正しいのだろう。しかし、多くの場合、ブロックチェーンでなくてもいい、むしろ、ブロックチェーンを使わないほうが効率的なシステムが作れるはずなのにブロックチェーンをわざわざ使っているように感じられる。

ブロックチェーンが注目されるようになった原点であるビットコインは、誰でもコンピューティングパワーをノードとして提供することで仮想通貨の管理システムの一部の提供者になれるという形での非中央型を実現した。提供者は提供するコンピューティングパワーに応じて仮想通貨を得られるというインセンティブを得られるように設計することで、裏切りが起こりにくくし、かつ、裏切りを行うには提供するコンピューティングパワーの過半を得る必要があるようになっている。そのことから、トラストを生み出しているとも言われており、これはすごい発明である。将来的には、マイニングの際に得られる仮想通貨が減り最終的にはなくなること、ブロックチェーンを保存するために必要とするディスク容量がどんどん拡大していくこと、仮想通貨の取引が増えた場合のスケーラビリティの実現などの問題があるものの、何とかしていくだろう。

一方、Hyperledger Fabric、これは、IBMのキーワードをビジネスに繋げるうまさを感じずにはいられない。コンソーシアムチェーンと言われているが、基本的に信頼できる複数の企業でブロックチェーンを管理することを想定している。したがって、トラストを生み出す必要はない。次に、ビットコインではクライアントからの要求(トランザクション)を全ノードで共有するのに対して、細かいことを言うと、FabricではOrderingサービスと呼ばれるサービスが全トランザクションを受け取って、ブロックに取り込む順番を決めて他のノード群に渡す。つまり、Orderingサービスという中央があるわけで非中央型も実現していない。したがって、Fabricはビットコインのすごさを何も実現していないように感じられる。しかし、Fabricはコンソーシアムを作るためのツールである、と考えると、見え方は変わってくる。コンソーシアムに所属する全企業が同じコードやデータを管理することができること、それは企業間の連携のあり方を変える可能性を感じる。

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