2019年12月2日月曜日

Hyperledger Sawtooth & Grid

引き続きHyperledgerについて書く。今回は、Hyperledger Sawtoothについてである。2016年にIntelがソースを寄贈して以降、開発が続いているプロジェクトである。Intelのハードウェア(SGX)とセットで完全な動作が可能となる独自コンセンサスアルゴリズムPoET (Proof of Elapsed Time) が特徴となる。ビットコインのコンセンサスアルゴリズムPoW (Proof of Work) のようにわざとコンピューティングパワーを使うような処理をする必要はなく、コンピューティングパワーをあまり使わずにコンセンサスが取れる。なお、開発環境用にSGXの代わりにシミュレータが提供されているが、不正は容易なので実用的ではない。

信頼できるシステムの実現には、何らかトラストのルートが必要である。Fabricの場合は基本的にノードの提供者を限定することでトラストを実現している。Sawtoothはプロセッサによって実現するというIntelらしい仕組みになっている。Intelの戦略は昔から明確だ。プロセッサを売るために、その有効性が見えるソフトウェアやソリューションを提供してくる。Intelはフィールドワーク含めさまざまな調査をした上で、プロセッサの使いみちについて全方向で提案してくる。利益が莫大だからできるのか、そこまでやるからこそ莫大な利益をあげられるのか。

なお、開発が進められた結果、PoET以外のコンセンサスアルゴリズム(Raft/PBFT)も提供されており、Intelプロセッサなしでも利用可能だ。トラストについてはFabric同様にノードの提供者を限定していることから生み出されていることになる。そのため、使い方によってはできることはFabricと同じだ。

さらに、IntelはCargill、Bitwise IOと共にブロックチェーン上でサプライチェーンを実現するためのツール群を提供するフレームワークとしてHyperledger Gridを提供している。企業向けブロックチェーンの活用はなかなか悩ましい。企業間で連携するシーンと言っても、力関係があるような関係では別の仕組みのほうが効率的だからだ。例えば、トヨタと部品メーカーでは、トヨタが他の部品メーカーにトヨタが作ったシステムに情報を入力させればよい。実際、そうなっていて何の問題もないし、透明性も結局トヨタ次第になるだろうから、効率的だ。とは言ってもそういう関係ばかりではないので、有望な領域はサプライチェーンということになるのだろう。アメリカの小売ターゲットはGridを使って管理するようだ。なお、最大手WalmartはFabricを使う。これらも、複数の小売でコンソーシアムを組むところまでいかないと、ブロックチェーンを使う意味はあまりなくなりそうに感じる。

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